こんにちは!
つくしです
上手にあつかえば、複数の出演者を1本で収録できるのがこのマイク。ガンマイクです。
でもこのマイク、
「上手くあつかう」にはコツがいるんです。
「え、しゃべってる人の口をねらって、ガンマイクの先っぽを向けるだけでしょ」
ですよね。
ほぼ正解です。間違いではありません。
が、
ドラマや映画の録音部の立場から答えると、
「1人しゃべりでワンシーンワンカットなら問題ありません」です。
※理由はコツ③でわかります!
というわけで、
今回は、ガンマイクでセリフやコメントを録るためのコツ。です。
「誰にも教わってないけどこれでいの?」や、
「いつもこう使ってるけどこれでいいの?」が、
「へー、音声さんって、あの大きいもふもふをそう使って録ってるんだ」
目次
ガンマイクでセリフやコメントを上手に録るコツ①
セリフを覚える
「セリフ覚えてないからオフるんだろ!!(怒)」
と、
当時は、よく「セリフ覚えろ!」と言われました。
(いいわけはたくさんあります…)
【オフる】
音源にガンマイクが向いていない状態または、失敗。特にドラマではNGの対象になる。
反対に、しっかり音源にガンマイクが向いている状態を【オン】や距離も近い表現の【オンマイク】といいます。
後処理に関して、オンの音をオフにすることは比較的簡単ですが、オフの音をオンにすることはとても困難です。覚えておきましょう。
また、オフの使い方としては、
お茶の間の映像に、
「ただいまー」
などがあげられます。
この、「覚える」が得意であれば最強です。ガンマイクをオペレートする場合、どの場面においても役に立ちます。
例えば、ドラマなどの芝居。
一つ一つのセリフをきっちり録らなければらなないので「セリフを覚える」ことが必須だったりします。
つくしは最初ドラマの現場からスタートしました。若かったので、今とくらべると断然セリフ覚えは良かったです。(本当です!)
これに関しては、若い記憶力にはかないません。
が、大丈夫です。
覚え方にもコツがあるんです。
セリフはすべて覚える必要はない
このコツは、
「セリフのしっぽで覚える」です。
「しっぽ」とは、セリフの最後という意味です。
そうです。
セリフの最後の部分だけ覚えればいいんです。
例えばこんな台本があるとすると、
「…でした。めでたし、めでたし、」
「キジって本当に強いの?」
「強いよ〜、くちばしで突っつくんだよ〜」
「…鬼だよ、相手鬼なんだよ、くちばしで突いたぐらいじゃ効かないよー」
「んー、でもね。。。同じとこばっかり…突っつくと…痛いじゃない!?その攻撃なんじゃない?」
「…そっかー、でもなー、んー」
「どうしたの?」
「なんでキジにしたんだろう?登場しちゃったからしょうがないけど。せめて鷹とか鷲だよー、zzz」
この場合は、
めでたし、めでたし、
(2回復唱は注意!)
強いの?
突っつくんだよ〜
効かないよー
攻撃なんじゃない?
でもなー、んー
どうしたの?
以上の単語を覚えるだけです。
どうですか?これなら本番前から始めても間に合いますよね。
また、なれてくると、もっと短縮できるんです。さっきの台本だと、
めでたし
強いの?
だよ〜
ないよー
じゃない?
んー
どうしたの?
といった具合です。
この場合、覚えやすい単語をわざわざ短縮する必要はありません。でもこの、「しっぽを覚える」を実践してなれてくると、かなり短縮するようになります。
要は、自分がわかる単語ならいいんです。まずは、やってみましょう。
ガンマイクでセリフやコメントを上手に録るコツ②
しゃべってない人を見て録る
「ガンマイクでセリフやコメントを録る場合は、しゃべっている人を見て録るんじゃないの?」
なんですが、「誰が」「いつ」「何を」しゃべるかわからない状況、状態の場合はそうはいきません。
このコツは、特にENGのインタビューで使えます。
ドラマなどの場合は、テスト〜リハーサルでセリフは入るので…
最終手段といったところでしょうか…
そしてこの訓練は、まず2人しゃべりからがおすすめです。
具体的には、
- しゃべっている人をガンマイクでねらう
- ガンマイクを固定してしゃべっていない相手を見る
- しゃべっていない相手のしゃべり始めをねらう
(話の流れをよく聞きながら)
です。
単純に、話してない人の口が動き始めるのを確認できるのでねらいやすい。
ということです。ですが、大切なのはやはり話の流れです。
話をしっかり聞いていれば、2人しゃべりなら外すことはそんなにないでしょう。
複数しゃべる人がいて、しゃべっている人だけを見ている。
この行動は、かけだしの数ヶ月で卒業してください。もちろん録っている最中にオフることのないように、チラチラしゃべっている人の動きの確認も必要です(もちろんですよね)。
また、
人数が多い場合でガンマイク1本で録る場合は、多少オフることは仕方ない。と考えましょう。(ドラマや映画ではNGです)
後の項で説明しますが、コンパクトに出演者をまとめたり、音質をそろえることで、ガンマイクでフォローすることはできます。
特にENGのコメント録りなら、話のキモを外さなければいいんです。こちらもまず、空き時間に訓練でやってみましょう。
このコツで重要な技術は、
「ガンマイクを見てなくても音源からズレないこと」です
見出しの通りです。
ブームでガンマイクをあつかう上で、重要な技術の一つがこれです。
訓練法は、
- ブームをいっぱいに伸ばす
(長い方が良い) - ガンマイクで立った人を想定した目標物をねらう
- ねらった体勢のまま顔を右に向けて10秒
→顔を戻してマイク確認 - 次は左に向けて10秒
→顔を戻してマイク確認 - 最後に下に向けて10秒
→顔を戻してマイク確認
これで1セット。
左手前(右利き)、右手前(左利き)どちらでも、最初にねらったガンマイクの位置がズレなくなるまで訓練しましょう。
この技術を身につけると、ブームをあつかいながら周りを見ることができ、本番中の視野が格段に広がります。
マイクブームのあつかいに関しての記事はこちら。参考にしてください。
ガンマイクでセリフやコメントを上手に録るコツ③
音質を合わせる
(フワッと録る)
このコツの前に、少しガンマイクの音について説明させてください。
ガンマイクの音、しっかり聞いたことありますか?
正面、30度、45度、90度、
人の声を、上から、下から、
ねらい方でそれぞれ、音質が違いますよね?
正面のオンマイクだと、パキッ!としたクリアな音。
そこから横に、30度、45度、90度とずらしていくと、正面の「パキッ!」よりだんだん音がぼやけて(やわらかく)(フワッと)してきます。
人の声を上から録ると、
- 高音が立った
- 音圧はないが聞きやすい
- 軽い
音です。
反対に、人の声を下から録ると、
- 低音が立った
- 音圧はあるが上からと比べると明瞭度に欠ける
- 重い
音です。
また、正面の音でも距離が違うと、だんだん周りの「空気」「空間」が目的音に足されて、その場所の状況(情報)が入ってきます。
映像のサイズにあった自然な音。
という点で、ピンマイク(ラベリアマイク)では録れない、ガンマイクの利点といえます。
この点でつくしは、カメラマイクはとてもいいマイクだと思います。
上記は、つくしの音の表現です。そんなに間違ってないと思いますが(汗)。
作品は、台本(文章)や打ち合わせ(言葉)から、イメージして作り上げます。撮影技術の作業とは、基本的にこの「文章」「言葉」からの変換作業なんです。
なので、音を言葉に変換できることも大切な技術なのです。聞きながら、「こんな音」を言葉で表現し、人に伝えられるようにしておきましょう。
ガンマイクのオペレートでこの違いを知っておくことは、
ブームでガンマイクをあつかう上で、重要な技術の一つです。
それでは、以上のことをふまえ、音質を考慮した録り方を見ていきましょう。
音質を考慮した録り方とは?
ただ、音を録るだけなら、音源にガンマイクを向ければ入ってきます。しかし、プロとして音を録る場合にはそれだけではいけません。
音質を意識する。
このコツ③は、この点に関しての録り方です。
そのコツは、ずばり、
「そのシーンの1番悪い音に合わせて録る」です。
特にドラマや映画では、この点を重視して録ります。しかし、その他のENGにおいてもこのコツはとても使えるので必ず理解しておきましょう。
ガンマイクでセリフを録る場合、様々な方向から収録することができますね。
現場の基本的には、
- 上からかまえて
- 顔の正面から
- 可能な限りオンマイク
このような状態で録るイメージです。
しかし、
必ずこのような、ベストなマイクポジションで録れるとは限りません。
映像に写るから遠くから…
影が出るから下から…
正面に入れないから角度をつけて…
例えば、以上の状況があげられます。
では実際の現場ではどうするのか?
おさえておきたい基本的な状況別で、音質を考慮した録り方を見ていきましょう。
収録する人数が多く、それぞれガンマイクの向け方が違う状況
この状況の場合はではまず、できるだけ出演者をコンパクトに配置して収録するようにしましょう。
例えばこのような、
- 3人しゃべり
- 大きい四角いテーブル
- 3辺に1人ずつ座る
- 残りの1辺にカメラ
という配置。
カメラに近い2人はオンマイクで録れるが、カメラの正面の人は遠く、照明の影も出るのでいいマイクポジションに入れない。
という状況。
この場合で、カメラに近い2人をビシッと録ってしまうと、奥の人の音質の悪さが目立ってしまします。
この違和感をなくすために、
手前の2人の音を良くしすぎない。全体を、「フワッと録る」
ということです。
マイクフォローも最小になり効率的です。
また、マイクの向け方にもコツがあります。
距離がある音源には、ガンマイクをしっかり向けて(面を合わせ)、その音質に合わせたい近い音源にはしっかり向けず、正面ではなく45度ぐらいのサイドで録る。
※実際に聞いて判断しましょう。
この音質やレベルの合わせ方は、ドラマや映画でよくやる方法です。
ガンマイクの「距離」「角度」でどんな「レベル」「音質」で録れるのか。
この点をしっかり確認しておきましょう。
※空き時間に必ず訓練しましょう!
この技術も、ブームでガンマイクをあつかう上で、重要な技術の一つです。
1人でも、ドラマのようにカットが変わる状況
1つの作品は、複数の「シーン」で構成されます。また、この「シーン」も複数の「カット」で構成されてます。この構成を前提に、説明していきます。
前記では、複数の音源があって、個々の立ち位置によってガンマイクの向け方を変える。その解決法でした。
次は、1人です。
え、問題ある?と思いますよね。
あります。
1人でも、
ドラマのようなカット録りの場合は、カットによってマイクポジションは変わります。カメラの位置やサイズが変わるので当然です。
カメラ位置が変われば照明が変わることもあります。そのため、ガンマイクを向ける条件が変わる。
このために、
1人ですが、
ワンシーン中のカットごとに音質が変わってしまわないように、マイクポジションを決めなければなりません。
例えばあるシーンで、
- 部屋全体の広いルーズショット
- ソファー込みのルーズウエストショット
- バストショット
という構成だったとします。
撮影の順番は①②③の順撮りなのか、③②①と逆なのか。様々です。
この場合、
③カット目のバストショットでガツンとオンマイクで録ってしまうと、その他のカットとの音質で差がついてしまう場合があります。
現場の状況や出演者の声質にもよりますが、
映像のサイズがヨリだから、マイクもオンマイク。
この判断だけではダメな場合がある。
ということです。
なので、具体的には、
①②カットは映像いっぱいでねらい、③カット目は、②カットぐらいで録る。
という録り方です。
重複しますが、
- セリフの強弱
- 出演者の声質
- 音場の具合
もマイクポジションを決める要素ですが、基本的な考え方はこう。
ということです。
以上これらが、「そのシーンの1番悪い音に合わせて録る」という考え方です。
イメージできたでしょうか?
そして、この記事の冒頭の答え、
「1人しゃべりでワンシーンワンカットなら問題ありません」
は…
もう理解できましたね。
あとがき
- セリフのしっぽで覚える
- しゃべってない人を見て録る
- ガンマイクを見てなくても音源からズレないこと
- レベル、音質を合わせることができる
- 音源とマイクの位置で、録れる音をイメージできる
これらの技術は、現場で習得する。だけではなく、必ず空き時間にトレーニングしましょう。
つくしは5mのブームをいっぱいに伸ばし、MKH816というマイクを付けて、顔は動かしてもマイクは動かさず3分。3セット。
というジム並みのトレーニングを、スタジオ収録の空き時間に毎回(3ヶ月ぐらい)していました。
いいトレーニングかどうかは別としても、まわりの状況を確認しながらマイクポジションをキープする。という技術を早く身につけることができました。
ま、当時は他の部署の同期もたくさんいて、休憩時間は自主トレ。という空気でした。今考えるといい環境でした。
最初からは当然できません。
ただ、「最初だから」がむしゃらに数をこなしてください。これに関しては、根性論賛成です。
回数をこなすことで、基礎的なことを身体に覚えさせる。身体が覚えたら、次のこと。
この繰り返しでいろんな技術が身につき、人に教えたり、人に指示するとができるようになるんです。
人を動かす立場になったときも、その仕事を効率的にこなすには、がむしゃら新人になります。
ずーと、どの段階でも最初はがむしゃらなんです。
そして、その立場の仕事が楽にできるようになったら、もうそのポジションではなく次のことを考えましょう。
こうして仕事を継承し続けられればいいですよね。
今回はここまで!
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