こんにちは!
つくしです
「来月からドキュメンタリーの撮影入ったから。たのむな」
ドキュメンタリーを、観たこともやったこともないかけだし音声さんが、何の予備知識もなくこう言われたら。
「ぇ?!」
の後に、質問責めですよね^^
「ドキュメンタリーってなんですか?」
「機材はどんな感じですか?」
「いつもの取材とどう違うんですか?ピンマイク(ワイヤレス)は仕込みますか?」
という感じだと思います。
ちょっとしたパニックですよね。
(落ち着きましょう)
でも、大丈夫です。
「このジャンルはこんな感じなんだ」という基本さえ知っていれば、あとはそれに沿って臨機応変に対応するだけです。
「でも、、その、臨機応変が、、、」
ですか?
悩む必要はありません。
なぜなら、
その対応を、
「あなたならできる」と判断して編成されたクルーだからです。
ドキュメンタリーの音声。というポイションは、その「対応」ができないスタッフに任せません。
なので、
「任せられる音声さん」と認識されたのです。
覚悟してください^^
というわけで今回は、
【音声さんのお仕事】基本的なドキュメンタリーの録り方・基礎知識
目次
ドキュメンタリーの録り方(撮り方)・基礎知識1
「ドキュメンタリーってなんですか?」
ドキュメンタリーとは、記録映像・記録映画ともいわれます。
(小難しい)
ようするに、
取材対象に演出をしないで、ありのままの状況を記録、編集した作品です。
文学でいうと、ノンフィクションですよね。
「それではいきまーす、3.2.1……」
ではなく、
常に始まっているところへクルーが入らせていただいて、回す(撮影する)。という現場です。
まとめると、
ドキュメンタリーの撮影とは、
- 撮影の都合で進行されない「生の時間」で、
- 演出をしないで目的の作品に仕上げるために(主題はあります)、
- 効率的に切り取る。もしくは、撮り続ける作業。
となります。
この考え方は、正直いろいろありますが、一番シンプルにいうとこうなります。
「主題はある」と言っても、撮影期間中に変更することもあります。
なので、
撮影しながらいろいろ決まっていく、不確定な要素が多い撮影といえます。
この「不確定」という要素が多いため、「臨機応変」という対応が必要なんですね。
ドキュメンタリーの録り方(撮り方)・基礎知識2
「機材はどんな感じですか?」
ドキュメンタリーといっても特別な機材はありません。が、 基本はあります。
「撮影対象をありのままに撮影」という前提から、基本的にはガンマイク・カメラマイクがメインマイクです。
なのですが、
あくまでも基本。
と覚えておきましょう。
装備的にはもちろん通常のENG機材一式が必要です。
主に、
- コンパクトミキサー
- ガンマイク
- ブーム
(2〜3m) - ワイヤレス
(必要数) - イヤモニ
(離れる場合に必要。ワイヤレス受信機でも可)
注意点として、ドキュメンタリーは一回の収録時間が長くなります(長回しですね)。バッテリーは余裕を持って準備しておきましょう。
そして、カメラマイクはとても重要になります。
音声さんがついていない状況で撮影してしまうこともあります。カメラマイクのジャマーは常に装着しておきましょう。
ドキュメンタリーの録り方(撮り方)・基礎知識3
「いつもの取材とどう違うのですか?」
「ピンマイク(ワイヤレス)は仕込みますか?」
「いつもの取材とどう違うのですか?」
ずばり、他の取材とドキュメンタリーが違う点は、
撮影の都合で進行しない
です。
まずこの点をしっかりと把握しておきましょう。
そのため、基本撮影スタイルは、
お話を聞くとき以外は、被写体と一定の距離をおく撮影
となります。
この感じをイメージしておきましょう。
例えば、
情報・バラエティのように、
- 出演者の正面にカメラを構えて「スタート!」で、いっしょにお店まで歩く
- 何かをする前に段取り等を打ち合わせして、わかりやくなるように撮る
- 何かをした感想、コメントを最初から最後までしっかり撮る
- うまくいかなかったら撮り直す
ではなく、
- どこかへ行くのを後ろからついて行く
- 何かをしているところを撮れる場所から撮る
- 何かをしているところへ近づいて行って聞く
- 何かを話し始めたから撮りながら近づく
という感じです。
なので、条件の悪い録音になる。ということも合わせて覚えておきましょう。
通常の取材と比べると、最初は消化不良な点(もう一回撮りたいぃ!という感じ)がある思いますが、当然すべて一発本番です。
素早くその現場を把握して、その瞬間のベストな録音ができるように、
いまコメント録りが始まったらこう録るといった予測をしながら「作業」することが重要です。
ちなみに「作業」と書いた理由としては、
(この点も臨機応変ということなんですが)
現場では、常にカメラの後ろでスタンバイできているとも限りません。そして、撮影対象の時間は止まりません。
機材車を移動していたり、機材を運んでいたり(準備、撤収など)。この時にカメラマンが収録しなければならないシーンに遭遇してしまうこともあります。
例えばこの場合だと、
「カマラマイクにジャマーは付いているか」
「カメラの音声レベルは auto か manual か」
という点に注意しておきたいですね。
ちなみにカメラの音声レベルに関しては、マニュアルで録ることができればベストですが、コメントより周りのノイズ大きくない場合は auto でも問題ありません。
このように、
自分がいない時に撮影が始まってしまう可能性がある。という点も、通常の取材とは違う点です。
もちろんこれ以外の状況もあります。そのケースを一つ一つ想定しておくこともいいのですが……
そもそもやったこともない現場の想定って、
あまりイメージできないですよね^^;
なので、先にも書いたように、
「このジャンルはこんな感じなんだ」という基本を知って、それに沿って臨機応変に対応する。
このことが大切なんです。
あまり考え過ぎないように。
大丈夫です。
「任せられる音声」として認められたからそこにいます^^
必要な予備知識さえあれば、自信をもって対応していけばいいんです。
「ピンマイク(ワイヤレス)は仕込みますか?」
まず結論から、
ピンマイク(ワイヤレス)は仕込むこともある
です。
つくしがピンマイクを仕込んだドキュメンタリーで、人形師(ご高齢)に密着する作品がありました。
幼稚園、小学校など、子供向けの人形劇です。
これを、大道具、小道具、音響(フットペダルでBGMやSEが出るんです)、人形製作、すべて一人でこなします。
なので、
人形劇本番以外の一人作業が多いんです。
ここです。
この作業の時の「つぶやき」
黙々と製作している時のブツブツ
練習してうまくいかない時のブツブツ
セットを組んでいる時のブツブツ
奥さんへのブツブツ
特に本番前、人形とブツブツ
これらは、
ワイヤレスを仕込むことで撮影対象者と距離をとることができ、また、マイクを意識させずに録ることができた自然な音声なのです。
それなりに近づかれてて、
ガンマイクでがっつりねらわれて、
じ〜〜っと注目されていたら、
ブツブツ言いませんよね
結果この音声が、この作品にはいい感じでした。
なのでこの音声、
ガンマイクでは録れない。と判断できます。
機材のところで、
「撮影対象をありのままに撮影」という前提から、基本的にはガンマイク・カメラマイクがメインマイクです。
と書きました。
が、上記の例のように、
「離れているからこそ録れる音声」はあります。
それが「主題」にかかわるのなら、「ピンマイクを仕込む」という判断をしなければなりません。
この「離れる」という撮影のために、ディレクター用でイヤモニを用意しておくと便利です。ワイヤレスを仕込んで距離をとる撮影の場合は用意しておきましょう。
ちなみにイヤモニは、ワイヤレスの受信機にイヤホンアウトがあればそれでOKです。ミキサーに近づいてもらって付けてもらうか、ディレクター用で受信機を用意するか。となります。
この「マイクを仕込む」という方法が、「演出」にあたるのでは?という議論をよくしました。「音声的には」の考え方とは?
この件に関しては、プロデューサー的には、ディレクター的には、カメラマン的には、音声的には、などなどいろんな意見があります。
本当、様々な意見があり、みなさんも今後そのような話しをすると思います。
なので、
音声という立場から、ピンマイクを仕込む方法は演出ではない。という考え方(個人的意見です)をご紹介しておきます。シンプルです。
ドキュメンタリーに限らず、マイク別に音声を考えてみると、
- ガンマイクでねらうと
スタッフが近い
マイクが視界に入る
なので、
今マイクを向けられてるという音声 - ピンマイクを仕込むと
スタッフが離れている
マイクが視界に入らない
なので、
マイクの存在を忘れた(自然な)音声
という傾向にあります。
当然、必ずしもではありませんが、音声あるあるといえます。
このことから、
「ピンマイクを仕込む」ことで、撮影機材(マイク)やスタッフの存在が最小限になる。
と判断することができます。
なので、
むしろピンマイクを仕込む撮影の方が、「ありのまま」という環境に近くなり、ドキュメンタリーの前提にあてはまる撮影方法といえる。
ということです。
結論。
このことからドキュメンタリーで「ピンマイクを仕込む」という方法は、「演出にあたらない」となるわけです。
付け足しとして、
このジャンルはこう!この場合はこう!という手法は、つくしも先輩からたくさん教えていただきました。
そしてそれらには、しっかりとした根拠がありました。
(いろんな席で何度も教えていただきました)
このしっかりとした根拠があるからこそ、技術に自信を持って作業ができる。ということです。
自分の技術にしっかりとした「根拠」を持つことは、長く続けていく上で必ず必要な、
これもある意味技術、なんですよね。
あとがき
ドキュメンタリーという撮影は、クルー全体でとても思い入れが強くなる撮影といえます。
これは悪いことではありませんし、クルーの士気が高く、いいモチベーション。ともいえます。
しかし、そのために注意しなければならないことがあります。
「撮影対象をありのままに撮影する」ということは、
「撮影対象の日常、生活、人生に入る」というとこになります。
なので、必然的に撮影期間も長くなり、数週間、数ヶ月、中には年単位になる作品もめずらしくありません。
撮影対象と長いお付き合いにならざるを得ないんです。
そのため撮影クルーは、その「空気」ならなければいけない。と教えられたこともあります。
また、ドキュメンタリーという作品は、賞をねらって制作する場合も多く、この理由から、先輩との温度差が生まれることもしばしば(汗)。
このような状況の中で、
演出のないありのままを撮影しながら作品を成立させなければなりません。
ドキュメンタリーという作品は、「こういう感じ」というイメージはあっても、基本的に撮っては組み立て。撮っては組み立て。という、言ってしまえば行き当たりばったりという要素が強い作業なのです。
ここで注意です。
以上の状況の中で、撮影、編集していくと、「こうしたい!」という欲が出てきます。
当然作品を良くしたい。までの欲ならいいのですが、問題はそれ以上の場合。
これにスタッフは流されず、「ありのまま」の撮影に徹することが大切です。
ようするに、
「ありのままを撮影」というドキュメンタリーの大前提を見失ってしまい、思い通りに成立させたい。という欲から、演出を加えた撮影になってはいけません。
ということです。
被写体との関係が長く深くなっていっても、
賞をねらうための特別な思い入れがある作品でも、
「ありのまま」というドキュメンタリーの大前提をスタッフ一人一人が忘れず撮影することが大切なのです。
技術サイドが構成、演出をどうのこうのということはありませんが、この意識は忘れないように。
「今度のドキュメンタリーよろしくな」
といわれる前に、このことはしっかり理解しておきましょう。
今回はここまで!
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