登山に行くと、段ボールなどを山積みにして、背負って運んでいる人を見たことがありませんか?
その人が「歩荷(ぼっか)さん」と呼ばれる人なんです。
山小屋で必要なものを足で運んでくれる貴重な存在なのですが、その歩荷さんたちのことってあまり知られていないこともあります。
そこで今回は、歩荷さんについて調べてみました。
どんな仕事をして、どんなトレーニングをしているのか、そして歩荷さんは尾瀬の地域に多くみられます。その理由は何かについてお伝えしていきます。
目次
歩荷(ぼっか)ってどんな仕事?
まず、「歩荷」っていう言葉自体初めてだった私は、「歩荷」ってどんな意味?ってことで調べてみました。
歩荷の意味
歩荷とは、
荷物を背負って山越えすること。特に山小屋などに荷揚げをすること。また、それを職業とする人。
Wikipedia「歩荷」より引用
と書いてありました。
歩荷とはそのお仕事のことを指す言葉でもあり、その仕事をする人を指すわけです。それで「歩荷さん」ともいうのですね。
歩荷という仕事
歩荷さんは、背中に背負子(しょいこ)を背負って、そこに段ボールなどに詰められた荷物を何段にも重ねてのせて運ぶのです。
その重さは20キロから100キロとその歩荷さんの体調や経験などによって違いますが、それでも重いですよね。
標高の高い山にある山小屋には登山客も訪れます。
そうしたところに食料品や生活用品なども必須ですよね。
食料や生活品のほか、使い切ったプロパンとか、トイレの汚泥処理タンクだとか、登山道整備用の道具や燃料など、山小屋で必要とされるものはいろいろありますので、そうしたものも、歩荷さんが運んでくれます。
なので、山小屋にはなくてはならない存在なのが歩荷さんでもあるのです。
登山愛好家たちが山小屋でおいしい食事が食べられたり、快適に過ごすことができるのも、また、歩荷さんがいてくれるからなのです。
また、歩荷さんはこうした山小屋に必要な荷物を運ぶだけではなく、登山愛好家たちの荷物を代わりに背負って、登山案内、ガイドの役割をすることもあります。
登山愛好家にとっても大切な存在ですね。
どのくらい歩く?
歩荷さんがどのくらい歩いているのでしょうか?
その地域によっても違いはあるでしょうけれど、往復で約15㎞ぐらいなのだとか。
歩荷さんによってはそれを2往復するという人もいるので、びっくりですが、そこにプロとしての魂があるのでしょう。
歩荷さんのお給料は?
こんな大変な仕事をして、歩荷さんっていくらくらいもらえるのでしょうか?
ネットの情報によると、どのくらいの重さを運べるかによってもお給料が違ってくるようです。
20キログラム級だと3000円程度、80キロくらいを背負うと10000円を超えるという感じだそうです。
歩荷になるにはどうすればいい?
どんなトレーニングをするの?
歩荷には特別な資格はありませんが、誰でもできるというわけではありません。
歩荷になれる人って?
数十キロの荷物を背負って山道を歩くわけですから、基礎体力に加えて筋力も必要です。
また、山道だけに豊富な登山経験が必要になってきます。
特に標高の高い、酸素の薄い場所が多いので、そうしたところでも安全に過ごすことができるための知識やいざというときの対処能力も備えていなければなりません。
また、自分の今日のコンディションや天候なども考慮して、どのくらいの荷物を運ぶかという計画を立てられる計画力、判断力も望まれます。
荷物を運ぶだけではなく、登山ガイド的な仕事もすることがあるので、自然や山を愛する人が適しています。
というか、自然や山が好きでなければ続けられない仕事ではないかと思います。
歩荷になるには?
歩荷になるにはどうしたらいいのでしょうか?
まず、「日本生年歩荷隊」という会社があります。ここに応募して就職するという方法があります。
アルバイトという形でも良いようです。
募集対象は「山を愛し、登山における最低限の体力を有する満18歳以上の方」とあるので、ぜひ我こそはと思う方は応募してみると良いでしょう。
また、直接山小屋で募集があれば、応募してみるという方法もあります。
他の歩荷さんたちにも「できそうだ」と認めてもらえたら採用されるそうです。
もしくは、大学や短大、専門学校などで、専門的な勉強をしてから仕事をするという方法もあります。
地理学、観光学、体育学、または自然に関する内容を学び、かつ体力トレーニングなどをしつつ、歩荷になるための準備をすることもできますね。
どんなトレーニングをする?
初めて歩荷さんになった人がいきなり80キロや100キロという荷物を運ぶわけではありません。自分の体力や筋力に合わせて増やしていくことができるので焦りは禁物です。
歩荷さんに必要なトレーニングに「歩荷トレーニング」というものがあります。重い荷物を背負いながら、山道を歩くトレーニングです。
ただ、重い荷物を背負って山道を歩けば良いというものではないのです。
歩荷トレーニング1
正しい歩行
まずは正しい歩行ができなければなりません。
これがないと、重い荷物を運ぶにあたって体に無理がこないようになるのです。
正しい歩行というのは、二本の足の重心移動が正しく行われている歩行のことをいいます。
身体を支える片足を軸にして、もう片方の足は無駄のない動きでまっすぐ前に出します。また、片足になったときにバランスを保つことも大切ですね。
こうしたバランスの良いスムーズな歩行を練習する必要があります。
歩荷トレーニング2
重いものを背負う
歩荷さんは重い荷物を背負って山道を歩きます。歩行トレーニングも山道を練習すると良いですね。
さらには重いものを背負ってトレーニングしなければなりません。
登山用のザックに重り(ペットボトルに水や米などを入れる)を入れて背負うわけです。
この重さは、軽いものから練習します。体が慣れてきたら徐々に重くしていきましょう。
こうしたトレーニングをすることで、体幹を鍛えることができ、バランス感覚も養えます。
歩荷トレーニングに必要なものは、
- ザック
- 重り
- 運動靴(履きなれたもの)
です。
身近にあるものでできますね。また必ずしも山道でなくても、平地からはじめて、階段を上ったり下りたり、そうしたところから体を慣らしていくということも大切かと思います。
歩荷さんに聞く、重い荷物を運ぶコツとは?
山や自然が好きで歩荷になりたいと思ってる人もいるかもしれませんね。
歩荷として活躍している歩荷さんはどんな風にお仕事をしているのでしょうか。
重い荷物を運ぶコツ1
無理しない
山のシーズンは春先ですね。山にはまだ雪が残る季節でしょう。
そうしたときから、歩荷さんは活躍し始めますが、最初はやはり20キロくらいからの重さの荷物を運ぶそうです。
そうして徐々に体を慣らしていくのですね。
毎日の仕事なので、その日の体力や体調に合わせて重さを調節したり、何キロを背負っても同じペースで歩けるように、無理せず体を休ませながら体を作っていくということがポイントになるそうです。
道中休みなく歩き続けることもできますが、少し疲れたら座って休むこともあるんです。
歩荷さんを続けるコツは「無理をしない」というところにありそうですね。
重い荷物を運ぶコツ2
背負子(しょいこ)
荷物を背負子に乗せて背負うのですが、この背負子も地元の大工さんが作ってくれるオーダーメイドです。
体に無理がこないように、疲れないように、本人の体格に合わせて作ってくれるのです。
これも歩荷を続けていくためのコツになりますね。
重い荷物を運ぶコツ3
チームワーク
あまりに大きいものや、バランスがとりにくいものは、一人で立ち上がるのが難しいこともあります。
そうした時には、仲間の支えが必要なのです。
立ち上がるときだけではなく、日ごろからのチームワークで、心の支えにもなってくれるのが歩荷仲間かもしれません。
重い荷物を運ぶコツ4
登山客との出会い・ふれあい
登山シーズンになれば、多くの山好きな人たちが山小屋を訪れたり、また山道で歩荷さんに出会うことが多くなります。
また登山客たちの荷物を背負ってあげ、ガイド的な役割を果たすこともある歩荷さんですから、そうした人とのふれあいもまた大きな力になっているのです。
「ありがとう!」と言われたり、「お疲れ様!」「がんばってくださいっ!」などの声をかけてもらったら、歩荷さんたちもうれしいので、出会ったらぜひとも声をかけてあげてくださいね。
歩荷は尾瀬に欠かせない
歩荷は尾瀬に欠かせないと言われています。
尾瀬というのは、群馬県、新潟県、福島県の県境に広がる地域のことです。
この地域に歩荷さんをよく見かけることができるのです。
どうしてでしょう?
かつては日本の各地で多くみられた歩荷さんですが、交通機関の発達、道路の発達、また人件費の高騰により、徐々に減少してきています。
自動車が入っていくことのできない山小屋などには歩荷さんが物資を運ぶようになり、そうした山小屋ものちにはヘリコプターで運ぶのが一般的になってきました。
しかし、
ヘリコプターが運んでくれるのは、月に1度か2度。しかも天候によってはヘリコプターが飛ばないこともあります。
賞味期限のある食品などはヘリコプターが運んでくれるのを待つことが難しくなり、歩荷さんたちが運ぶことになってくるのですね。
なので、山小屋、特に自然の多い尾瀬では登山客や山小屋で自然を守る人たちのためにも、歩荷さんが欠かせない存在になっているのです。
日本全国で見られた歩荷さんも、今は一年を通して見られるのは、尾瀬の尾瀬ヶ原地区のみと言われています。
ただ、夏の間だけなど、期間限定や臨時的には他の山域でも歩荷さんが活躍していますよ。
まとめ
山登りにあまり縁のない私は、高い山に登ることもないので歩荷さんという存在を知りませんでした。
しかし、今回調べてみると、一風変わったお仕事ではあるけれど、なくてはならない存在として活躍している歩荷さんたちに一目会ってみたいなとも思いました。
機会があれば……ですが。
山や自然を楽しむ人たちのためにある山小屋も、この歩荷さんたちに支えらているということがわかりました。
今後、山を訪れるときには、ぜひこの歩荷さんのことも考えて、自然を大切にし、山小屋でのエチケットも守って、ステキな思い出を作りたいものですね。
今回はここまで!
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